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現代化学は、錬金術といわれた頃とは異なり、大きな進歩を遂げました。それを可能としたのが、周期律表の発見であり、量子力学をベースとした量子化学です。特に、電子スピン量子数の概念を導入することで、各種物質のいろいろな性質を原子および分子レベルから説明できるようになりました。
電子スピンとは
2)磁場の方向性を加味したポインティングベクトルを想定することで、電子スピン量子数は定義できます。電子の軌道上の運動方向(右向き、左向き)が原子の磁気的性質に影響を与えます。二つの運動方向は時間軸を逆にとることで表現できます。なぜDiracが時間軸をスピン量子数決定に必要としたか、時間軸をもつ相対性理論を必要としたか納得できます。
3)Pauliの排他原理 1,2,5)は以下のように説明できます。電子をもつ原子軌道は主量子数、方位量子数、磁気量子数、スピン量子数で定義されます。スピン量子数まで同じであるとは同じ軌跡に同じ運動方向をもった電子が2個入ることを意味します。この状態では、上図で見るように、これら電子の間には静電反発ばかりでなく磁気的反発も生じることになります。このような電子対は物理的安定な電子配置とはいえません。電子の運動が互いに反対方向である二つの原子軌道は原子内で安定に物理的安定性を保てます(磁気的引力が発生)。(図2)
4)原子の電子配置に見られる規則性はフントの法則8)として知られております。これは次のように説明できます。閉回路の同士の相互作用は必ず静電気的作用と磁気的作用を伴います。電子のもつ電荷とその閉回路が作る磁気量を比べた場合、静電気的反発作用は磁気的引力作用より強いといえます。原子は複数の電子をもちます。静電気的反発作用は、それら軌道上の各電子(スピン量子数をもつ原子軌道上の電子)が互いに分散したほうが安定であることを意味します。磁気は方向性を持ちます。その方向性は電子を引き寄せることができる個所を作り出します。そのもっとも特徴的な元素はハロゲン族原子です。これら二つの作用は周期律表に見られる各原子の電子配置に影響を与えます。
5)原子軌道の閉回路性から作られる電磁場を考慮すると、多くの原子は特有な電子配置および正負電荷分布をもつことが推定でき、各種化学結合(共有結合、イオン結合、金属結合)の生成機構は実に分かりやすくなります9)。原子特有な正負電荷分布を想定せずに化学結合を論じることはできません。
むすび
参考文献:
図1Stern-Gerlachの実験のモデル
1)電子対を作るのは磁気相互作用が必要です。二つの原子軌道閉回路の磁気中心が原子核を通る磁気軸にあるといえます。これは磁気相互引力を可能とします。原子内にある複数電子の間で電子対が作れます(図2)。
1)藤谷正一、木野邑恭三、石原武司:化学結合の見方考え方、オーム社、1987
2)時田澄男:実例パソコン:目で見る量子化学、講談社サイエンティフィック、1987
3)湯川秀樹他編:量子力学、岩波書店、p249、1972
4)Dirac.P.A.M.:量子力学(朝永振一郎訳)、岩波書店、1968
5)和光信也:固体の中の電子 講談社サイエンティフィック、1993
6)井上敏、小谷正雄、玉虫文一、富山小太郎:岩波理科学辞典、岩波書店,p749、1965
7)猪木慶治、川合光:量子力学I、II、講談社、1997
8)コットン、ウイルキンソン:無機化学、培風館、1994
9)川口勝久:Crystal Park(http://www.c-park.com)
1998