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3 原子軌道の決定(2)-多電子系-
 

原子は原子核と電子から構成されているが、多くの原子では複数の電子をもつ。このような多電子系原子は、電子数の違いというより電子周回軌道同士の電磁相互作用が生じるという点で、単電子系とは異なります。世の中では、電磁相互作用は電子電子スピン相互作用という観点から論じられてきております。しかし、ここでは、これまで言われている電子電子スピン相互作用に関する考えを採用しません。理由は原子軌道という周回軌道から生じるであろう電磁力を考慮すると、これまでの説明と比べ原子軌道が物理的イメージとしてかなり明確となり、多電子系原子の特性理解がはるかに容易となるからです。

原子核(電荷Ze)と電子との相互作用は主量子数nの軌道のエネルギー準位に影響を与えることはよく知られている。そのエネルギー準位は波動方程式から導き出され,


で示される。但し、h = h/2π
これから類推される水素の1s軌道のエネルギー準位は-13.6eVであり、水素の第1イオン化ポテンシャル13.6eVとよく合う。
ところが、上記式を多電子系原子の一つであるリチウムに適用すると以下のような問題が生じる。



リチウムは1s22sの電子配置をとる。上記式から2s軌道のエネルギー準位Ecomps2を求める、実験第1イオン化ポテンシャルからの2s軌道エネルギー準位-5.6eVよりかなり低い。

Ecomps2=-30.6eV
Eexprs2=-5.6eV

どうしてこのような25eVほどの大きな乖離が生じるのか?


多電子系原子の原子軌道のエネルギー準位決定は電子電子反発作用があるから複雑であると言われています。でも上にのべた25eVという乖離値は水素イオン化ポテンシャルの約倍です。この大きな値が電子電子反発作用だけで生じるとすると、この作用は原子軌道に影響をおよぼさないはずがない(軌道はきれいな形式であらわされない)。よく言われている説明は3体問題の運動方程式は単純には決められない、したがって、波動方程式の解は近似解しかとれないと、言われています。でも、水素のイオン化ポテンシャル程度という大きな値を近似解として求める乱暴さはどう解釈すればよいのでしょう。ここまでの乱暴をするということは、無茶としか言いようがない。量子力学の難しさの一端にふれた思いです。普通最上桁を4捨5入したら怒られますよ!量子力学という隠れ蓑を使えばなにをやってもいいといえるものではないのです。
多電子系原子の原子スペクトルは連続的というより離散的です。不思議とは思いませんか? 電子反発を考慮して原子スペクトルを解釈する方法は筆者にはとても不思議に見えます。どんなすばらしい高尚な理論(WKB近似理論など)があろうと、不思議なことはやはり不思議なのです。筆者は理由のない限り電子電子反発作用を考慮しません。
電子の周回運動が磁場を作るという公転説をとると、上記エネルギー乖離は以下のように説明できる。
周回運動の中心は原子核にあると解釈できるでしょう。リチウム原子の2つの1s内殻電子の二つの公転中心間の距離は原子核オーダーであり、互いに回転運動方向が異なる軌道の作る磁気的閉回路は容易に軌道対を作ります。したがって、この磁気中心では外部から磁束が入れない強力な電磁遮蔽を作ります。リチウム原子の外殻の2s原子軌道の公転中心は1s軌道の内殻と大きく変わらないと見てよいであろう(中心核電荷は変わらない)。したがって2s軌道電子は電子遮蔽効果の影響を受けます。
上記の電磁遮蔽効果を取り込んだリチウムの2s軌道のエネルギー準位は


と示されます。ここでV1sは電磁遮蔽に基づく電荷です。リチウムのイオン化ポテンシャル5.6eVからV1sを求めると、V1s=1.28 となります。合理的な値といえるでしょう。ということは、

電磁遮蔽は原子核の有効電荷を減少させる。
発生する磁界の方向と直交する電子運動方向は、電子の運動から定義される原子軌道の形に影響しない。
といえる。これら解釈は実験結果を説明するのに都合がよいと思えませんか?

Schrodinger定常状態方程式の解から導かれる原子軌道エネルギー準位は方位量子数が変わっても変化しません。電子の力学的運動からは変化が導かれないのですから、それ以外の作用として電磁気作用が原子軌道のエネルギー準位に影響をもたらすと考えたほうがわかりやすい。
電子の入った軌道への電磁場影響には2種類あります。一つは電磁遮蔽効果一つは電磁相互引力作用です。電磁遮蔽効果は電磁場の中心となる原子核荷電数に影響を与え、後者は周回軌道の幾何学的配置がその影響力を決定すると解釈します。ここで、軌道に影響を与えるのは、周回軌道と周回軌道との相互作用に基づくものであり、電子と電磁場との関係ではないとしています(電子の軌道はすでにSchrodinger状態方程式で決まっている)。
なぜ方位量子数の低い軌道は高い軌道より安定なのであろうか?それは方位量子数の小さい軌道のほうが高い磁束密度をつくるためである解釈できる。電磁遮蔽に打ち勝つ必要があるのですから(詳しい説明は追って述べるでしょう。正確かどうかはともかく根拠を明らかにできないこれまでの説よりはるかにマシでしょう)。これまでの説明では、s軌道はp軌道よりエネルギー的に安定であるとだけしか述べていません。私たちが知りたいのはその理由です。
電磁遮蔽は磁気的閉回路によって生じる。このような磁気的閉回路は対となる軌道が電子で満たされたとき作られる。多電子系原子では内殻から順に電子を詰めていくので、主量子数、方位量子数、磁気量子数の同じ軌道同士は容易に磁気的閉回路を作ります。しかし、外殻電子は内殻からの電磁遮蔽効果の影響を受けます。また、内殻軌道で作られる遮蔽効果はかなり強い(電子運動速度が違う)ので、外殻の閉回路は簡単に破壊されるでしょう(対となる電子1個は別な方位量子数、磁気量子数の異なる軌道にはいるか、主量子数の高い軌道に移る可能性が強い)。多電子系原子の外殻電子はまず各軌道に一個づつ詰まる電子配置構成をとる。
方位量子数2の軌道が周期律表での第3周期原子でできない理由は電磁遮蔽の影響によるのではないでしょうか?(d軌道はp軌道とかなりその形状が異なる)
内殻軌道からの電磁遮蔽効果をうけるために、外殻軌道に入る電子は磁気量子数の異なる軌道に入りやすいといえます。ただし、方位量子数1以上の軌道ではこの種の軌道のすべてに電子を充満(1個づつ入る状態)することは電磁気的安定な合成電磁空間を作ります。この合成空間は多電子系原子の原子核と異なる位置に中心を持ってくるため、この安定性は高いといえる。
合成電磁空間は電子を受け取る空間を作り出します。軌道対(電子対)をつくることを可能とします(ハロゲン族、カルコゲナイド族)。電子は対を作りやすい性質を電子自身がもっているわけでは決してありません。
外殻軌道への電子の充満は閉回路(対電子)をいくつか作ります。磁気的閉回路を作る原子軌道をふくめた複数原子軌道は、原子核中心に磁気的中心をもつ電磁場と異なる、電磁気中心を作り出します。この新たに作られた空間では電子を呼び込みやすい空間を作ると言えます。酸素およびハロゲン族は電子を受け取りやすい。
上記から推定される多電子系原子の特性は周期律から期待される原子特性を説明しています。これまで言われている多電子系の理解困難なかつ応用の効かない説明とよーく比べてください。

以上から多電子系原子中の複数電子は他の素粒子と次のような相互作用を持つと想定できます。

1 原子核と電子との間の静電引力

2 電磁シールドによる電磁反発

3 軌道と軌道との間の電磁相互作用力
これら3つの作用の観点から多電子系原子の原子軌道を論じるのがわかりやすいでしょう(しかし、これまでの説明とかなり異なります、これまでの説を無視したのは、原子のもつ基本的性質が何一つ導き出せないからです)。ところが、ここで問題が生じます。Schrodinger方程式だけからは各原子軌道のエネルギー準位はきめられないということです。しかし、固体物性を取り扱う場合、原子と原子との間の電子相互作用が主な問題となります。原子軌道のエネルギー準位そのものが大きな問題にはならないでしょう。大切なことは、実際に物性解析で原子軌道を使う場合、この問題があることを承知の上で使うことです。
 

多電子系原子の原子軌道に関するこれ以上詳しい説明を一時棚上げ(必要になったら再度述べます、多分磁性および超伝導現象で)します。

余談:

物質の性質に依存して発生する現象の多くは物質内での電子の移動を伴います。光発光、電気伝導、熱伝導などこれに当てはまります。磁性も電子の自己回転という移動方向が直接関わっているといわれております。これら現象の詳細な解析評価が原子オーダーで可能となれば、機能素子実現が容易になります。
夢実現に向けての基盤となる理論を物性論と呼んでいます。物性論物質内の電子移動に関する評価予測を量子力学の助けを借りて原子オ−ダ−から可能とする理論です。このような明確な目的がありながら、不幸なことに現在私たちが眼にする物性論は、材料設計にとって重要なことは何一つ提示できていません。これは物性を理解するための主な対象に、容易に理解できる軌道電子ではなく、理解困難な動的電子をもって来たためで、ここで、固体内の自由電子を動的電子と呼びます。なぜできないのかその理由は次の通りです。
先に述べましたように、量子力学では系のエネルギー準位を離散的に捉えることを通して状態を見る。現実の物性論は、動的電子の固まりを1つの量子力学系と見なしております。しかし、系と見なす根拠はどこにあるのでしょう?固まりのなかでの動的電子の作用変数の不連続性を発見する手だてがないのです。結晶場のポテンシャル中を運動する電子を考えればよいといわれるかもしれません。そのポテンシャルが原子軌道で用いる原子核静電ポテンシャルとどう違うのかサッパリ分かりません。はっきりいうと、現実の物性論はしっかりした量子力学的観点の上に構築されているわけではないということです。
また、動的電子を定常状態にある原子軌道電子に一致させることはできません。原子が定常状態にあれば動的電子は発生しないはずだからです。しかし、動的電子は定常状態にある原子軌道電子を想定せずにその発生元は決められません。ところが、物性論はそのギャップをいかに埋めるかの量子力学的案を提示していません。これで物性が分かったら脱帽です。原子軌道電子から動的電子になるには、電子スピン量子数に変化がないので、フォノンの利用が便利とされています。でも、素粒子提示イコール量子力学案ではないでしょう(でも筆者は誤魔化された。第2量子化方法については別の機会に述べるでしょう)。したがって、動的電子は原子オーダーからの取り扱いではなく固体内での統計分布を用いた取り扱いにならざるをえません。これでは、物性論は原子オーダーからの量子力学をベースとする物性予測評価というより統計力学をベースとする予測評価を行うといったほうが正確でしょう。
現在、物性解析は波動方程式解析手法(自由電子解析)を動的電子に適用し、その結果から物性を評価する方法をとっております。上にのべた二つの問題点に目をつぶったとしても、本当に波動方程式から物性が理論的に分かるのでしょうか?筆者は大いに疑問であると想っております。前の項で運動方向は波動方程式から定義されないと述べました。動的電子を波動方程式に適用しようとしても、その解から物性解析に必須とされる電子移動現象についてなにもいえないはずだからです。電子移動をエネルギー準位の観点から捉えていくことに依存はありません。そのためには出発到達個所のエネルギー準位を明確にしなければなりません。それら個所を原子オーダーで特定できればいうことがありません。動的電子の波動解析だけから特定原子を含む系内の電子移動を明確にすることは不可能です。
多くの物性に関する参考書では、最も重要な輸送現象の話になると波動方程式とのインターフェースをどうとるかというより、mobilityだとかの具体的実験値のほうに興味を移します。もともとインターフェースをもっていないからこのような結末は当然といえば当然と言えるでしょう。なぜ物性を明らかにするのに統計力学を必要とするか、その理由は明らかです。インターフェースの役割をそこに持っていかざるをえないからです。笑ってしまうのは、ドーパントの話です。ドーピング特性を理論的に理解したいが、インターフェースのもっていきようがない状態にあることがよく分かります(固体全体で扱われるべき動的電子が急に局所的位置の問題をとりあげるのですから,全体の体裁を整えるのは大変。急に居候が一匹まよいこんだらどうします。急いで居候を家族の一員にとりこみますか?)。ザックバランにいわせていただくと、わかりもしない動的電子を用いたつけの代償はあまりにも大きい。なにが物性理論は量子力学をベースとした高級理論だ、硬球理論の間違いではないのかとなります。
こんな状態で構築されてきた現在の物性論はやたらむずかしくなるのは当然で、しかも、柔軟性のありすぎる動的電子の適用は実際の機能予測応用となると殆ど役にたちません(手探り実験優先となります)。筆者は物性論を役にたたせるには、わかりやすい軌道電子を物性解析の主役にもってくる以外にないと考えています。はっきりいうと、物性論の再構築です。これはあくまで筆者の考えであって一般化されたものではありません。しかし、このホームページで述べる観点からみることは物性理解を極めて容易とするでしょう。個々の物性についてはCrystal Parkで述べる予定です。
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