利用できない理由を探求してみますと、その原因は極めてはっきりしています。
ab-initio量子化学計算システムを利用しての最大の問題は、結合電子特性および伝導電子特性を知ることがむずかしいことでしょう。計算回数の多さ、また、計算結果の解釈の難解さは根本的にはこれら原因によってもたらされるといっても過言ではない。
現在の量子化学計算では、化学結合電子は原子軌道同士の重なりから求めれれています。しかし、物質は、共有結合の他、イオン結合または金属結合、これらが適当に組み合わされて構造ができているとみるのが妥当です。しかし、量子化学でこのような組み合わせ状態をプログラム仕様書として表現する適当な方法がないのです。
比較的その機構がよく理解されている思われるのは共有結合(これも怪しいと思っておりますが)です。しかし、伝導電子が無視できないイオン結合および金属結合となると、やれマーデルング定数とか凝縮効果だとか格子問題にすり換わっております。このすり替えでは非局所的な原子原子間結合が伝導電子がどう関わってくるのかわかりません。
では、バンド理論では、伝導電子はしっかり定義されているかというと、実はもっとひどい。伝導電子は、格子中では量子化条件を充たす非局所軌道にあるといっております。どうやってこの軌道の作用変数を定義しているのでしょう?どうやってこの軌道を求めているのでしょう?
物質のフェルミエネルギー準位をしらべてみた。自由電子モデルだけではフェルミ準位は説明できない。しかし、離散性を充たす量子化条件を満足する作用変数を用いてのフェルミ準位の合理的説明はありませんでした。量子力学で出てくる準位離散性の原因はつかめなかったといってよい。まして、この対生成現象が原子との関連で(格子ではありません)述べられていません。
ということは、イオン結合および金属結合は、原子の立場からは不明であり、原子からのプログラム仕様書として記述できないということを意味します。すくなくとも、基盤のあやしいバンド計算結果の取り込みなどは私にはできません。物質の多くは結晶であるといっても、量子化学プログラムを用いてこれら特性を調べる気にもなりません。
それでは、伝導電子の発生元をしらべればなんとかなるであろうということで、原子をしらべました。
ところが、これも同様で私には理解できない。なぜ方位量子数の小さな軌道から電子は順につまっていくのでしょう?この機構は、経験則としてしか分かっていない。わからないから、各原子の物質内での特性を知らなければ物性はわからないはずです。これら問題をクリアして量子化学を扱っている人たちは本当に信じられないくらい頭がいいと思います。よほど物質の特性にくわしいのでしょう。でも、そんなにくわしいのならなにも量子化学プログラムを使わなくてもよろしいのではないでしょうか?という気をします。
くだくだと理屈をならべてきました。ようするに、物質中の化学結合および伝導電子に関するプログラム仕様書がない以上、量子化学設計システムは誰でもが使えるポピュラーで実用的なレベルにはないということが確認できました。それじゃ、私の納得する方法をやってみようと思いました。それをこれから述べます。あくまで自己流です。
はじめに原子から述べます。(第一の提案)
原子軌道は3種類の量子数で定義されるが、主量子数は原子核からの距離から、方位量子数は電子の角運動量ベクトルの内積いわゆるスカラー値から決定されます。磁気量子数は軌道面の位相傾きから定義されます。
磁性は電子スピンによって生じる。これまで電子スピン量子数は電子の自己回転から生じると説明されております。しかし、自己回転から電子スピンが定義されるとすると、実は奇妙な推定結果が得られます。Heを例に取りましょう。Heは2個の電子をもちます。この電子対の安定化エネルギーは摂動法を用いてもeVオーダーであるといわれています。、Bohr磁子から求められる安定電子間距離は10-14mオーダーです。これは電子同士が非常に接近した値です。全く奇妙であるとしか言いようがありません。
でも、皆さんは自己回転に納得しておられる。独学の私にはとても信じられないくらいの不思議さです。一体このような問題をどうやってクリアしているだろうか。それとも自分で確認していないだけなのだろうか?
そこで、私は電子スピンが原子軌道の閉回路性から生じるとするとしました。すると、なんの矛盾がなくHe電子対の安定化が説明できます。磁場の中心は原子核にありますが、電子電子反発問題は生じません。すくなくとも合理的に見えます。以下この案を採用します。
この提案を多電子系原子に当て嵌めると電子配置の問題およびフントの法則はわかりやすなります。原子軌道上の電子は必ず電磁空間をつくるからです。
s軌道は内殻電子の電磁遮蔽効果に打ち勝つような軌道の形を他のp、d軌道と比べてしております。したがって、s軌道に先に電子がはいります。難しい理屈をこねなくとも電磁場を考慮すれば直感的にわかります。分けのわからぬ理屈で、s、p、d配置順序が決まっているわけではないとなります。遷移金属原子でのsとdの軌道にエネルギー準位に入れ替えも電磁効果から説明できます。フントの法則も電磁空間から生じる電磁歪みの解消および電磁遮蔽効果を考慮すれば解決されます。
原子は電磁効果を打ち消すべく電子受容空間を作ります。これで、各原子軌道の特性がなんによって齎されるのか解釈できます。
ここまでわかるとあとは楽です。一つの原子の電子受容空間に向けての電子移動は、自らの電子の電子移動ばかりでなく他原子から電子移動も可能です。
共有結合をはじめすべての化学結合にこの理屈が当てはまると考えます。すると共有結合は電子受容空間を介しての電磁結合となり、イオン結合および金属結合は電子受容空間を介しての電子移動結合として説明できます。ここで注意したことは、中性原子の原子価電子が電子受容軌道に飛び込むことです。なにもしないで原子価電子が結合に関与するなんてありえません。人間が社会参加するのに自分ではなにもしないで相手からやってくるなんて余りにも虫のいい話です。
伝導電子とは電子移動の過程から生じる電子として説明できます。電子移動と内部転移から生じる過程で生じる。
ここまで原子軌道を用いての各種化学結合および伝導電子が定義できると、あとは量子化学的方法を適用すればよいだけです。いくつか例をあげます。
Pauling先生は混成軌道というすばらしい概念を化学に導入し化学の発展に寄与しました。残念なことにどうして混成軌道ができるのかについては答えを出してくれませんでした。ですが、各種軌道の電子移動接続容易性という観点から、電子受容軌道と接触できる軌道を考えると、容易に混成軌道の生成機構はわかります。
炭酸ガス生成を例にとります。この反応は発熱反応でありしかもその生成には初期エネルギーが必要なことはよく知られています。炭酸ガスの共有結合から生じる安定性は炭素単独とくらべて強い。その分だけ余分なエネルギーを熱として放出します。炭素は電子受容軌道としてp軌道をもちます。電子移動はs軌道からp軌道の間で生じます。他のp軌道は接触面積がすくないので電子移動は生じにくい。しかし、s軌道から電子受容軌道p軌道への電子の移動はエネルギー供給なしには生じません。初期エネルギーが必要となります。以上のように炭酸ガス生成過程が直感的によーくわかります。反応工程が極めて分かり易くなります。反応工程問題はエンタルピーを用いた熱力学計算で求められています、この計算よりもっと精密に取り扱えます。
物性についても量子化学的方法を用いてかなり肉薄できます。
アルカリ金属の化学ポテンシャルを、皆さんは知識豊富でいらっしゃるから、恐らく多分綺麗に答えをだすでしょう。でも、電子移動を考慮するだけで、以下のように実験値とよく一致する結果がえられます。アルカリ金属は金属結合でできています。これまで伝導電子で構成される金属結合はわけのわからない結合とされてきました。バンド理論の専売だったはずです。化学ポテンシャルを求めることはこれまでの量子化学ではむずかしかったはずです。でも自己流の考えでいうと、求まらなかったのは当然で電子受容空間を想定せずに原子のもつ原子価電子軌道同士の作用というあなた任せの結合ではわかるはずがないとなります。
おしまい
独学で量子化学をはじめ、恐れ多くも自己流とはいえ6つの提案をだした。しかし、これらの提案は、化学結合および伝導電子については曖昧性がなく量子化学的観点から定義できます、という意味で出したものです。すくなくとも仕様書は書けます。結晶を含めた物質に対しても量子化学的方法が適用できます。