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1.4量子化学解釈

これまでの量子化学は、電子対生成という観点から物質中の原子と原子との結合を見ております。この観点から見ると、物質(多くの有機分子)の特性が原子軌道の線形結合から求められます。この点で、この観点は優れたものといえます。しかし、すべての物質の特性をこの観点から簡便に知ることができるのでしょうか?それを明らかにするには、まず、原子および化学結合を知らなければなりません。原子に関しては、1.2原子の項でのべましたが、要約すると、原子価電子は原子軌道という閉回路に存在します。その閉回路が電子の磁気的特性をもたらすというものです。共有結合は閉回路同士の磁気的相互作用で解釈できます。化学結合および伝導電子は1.3で述べてきました。要約すると、化学結合(共有結合、イオン結合、金属結合および移動性結合)は電子対をもたらす磁気的相互作用のみで論じることはできず、軌道間の電子移動を考慮する必要があるということです。
量子化学を汎用性あるものとするには、これらすべての結合に適用できるようにしなければなりません。現在の量子化学は、電子と電子との磁気的相互作用を扱う点で、その相互作用から生まれる分子軌道(原子軌道の線形組み合わせで表現されます)を重視しています。そこで、上にあげた問題を解決するには、分子軌道定義の問題点を明らかにしなければなりません。そこでまず、この問題点を明らかにし、つぎに、この分子軌道の定義を改良し、これを用いて化学結合を解釈します。
    余談:量子化学計算が行われて間もない頃、計算対象は有機分子でした。これら分子の多くは共有結合で形づくられ、分子の計算特性は、電子対をベースに評価しても、実験結果と大きな差が生じません。ところが、電子対生成理論をあらゆる物質に無条件で適用しようとしました。このために、つまらぬところで足をすくわれ、量子化学は立ち往生してしまいました。計算結果が実験結果と合わないのです。代表的な問題に金属のフェルミエネルギー準位があげられます。電子対から求めようとすると、伝導電子を含む金属のフェルミエネルギー準位は決められません。この理由は金属結合およびイオン結合のところで説明しました。ところが、現在の量子化学はどうしたかというと、伝導電子が電子対計算で求まらないことに驚き、伝導電子と結合電子は別々なもので量子化学では結合電子しか取り扱えないという伝導電子の特性を加味して量子化学計算を行う情けない結果に落ち着いたのです。でも、この考え、手に負えない子供は我が子ではないという考えと同じに思えて好きになれません。先に、伝導電子は移動性結合電子として扱う方が便利であることを述べました。当然、物質評価のための量子化学の適用法が異なってきます。
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