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1.3.3金属結合

前のセクションで、共有結合は、占有軌道同士が正電荷特性の未占有軌道を介してかさなり電磁相互作用が生じることから、生まれるとのべました。しかし、未占有軌道が正電荷特性を持たない場合には、このような軌道の重なりは電子同士の反発から想定することはできません。
 

原子軌道には占有軌道と未占有軌道があり、電子の安定性は、これら原子軌道のエネルギー準位により決定されます。しかし、2つの原子を互いに近づけ、他方の原子の未占有軌道が占有軌道と交差する場合、占有軌道にいる電子にとってその未占有軌道が安定性があるかどうかは未知のはずです。

当然電子は、電子反発がないので、その未占有軌道に入れます。ところが、突然電子をうけとった原子は、この突然の侵入電子を外に出そうとするはずです。しかし、この電子は他方の占有軌道にあり、原子自身の制御外にあります。したがって、電子を出すことは原子同士を離す以外難しいでしょう。次にできることは、原子自身のもっていた電子を放出して外部から入ってきた電子を原子の占有軌道に落とすことです。この落とし込みは、もう一方の原子から見ると、占有軌道に電子がなくなったことを意味します。これは、電子補充ができること、すなわち、二つの原子間での電子交換が生じる可能性を意味します。これら2原子間での交換の繰り返しをこれ以降共鳴電子移動とよびます。共鳴電子移動は原子間を結びつける働きをすることは、電子放出が原子同士互いに近いほうが容易となることから納得できるでしょう。

正電荷特性を持たない未占有軌道を介しての共鳴電子移動による原子間結合を金属結合とよびます。

この金属結合の特徴は

 

共有結合と異なり電子スピンはこの結合に大きな影響を与えない。
金属結合半径は占有軌道のみから推定される原子半径より大きい。
金属結合電子の入る軌道のエネルギー準位は占有軌道の準位より高い。
(伝導エネルギー帯にある)
 

といえます。これら特徴は実験事実からいわれている金属結合の特徴とよく合致しております。
 

エネルギー準位は電子の存否によって二種類に分類されます。1つは占有軌道(占有原子軌道同士の電磁相互作用を含めた軌道も含まれる)によって作られる軌道のエネルギー準位であり、他の1つは静的には電子が存在しないはずの未占有軌道のエネルギー準位であります。前者の準位の存在するエネルギー領域を価電子エネルギー帯、後者の準位の存在する領域を伝導エネルギー帯といいます。金属結合をもつ物質中の電子は、未占有軌道にも存在するので、伝導エネルギー帯にも存在します。先のセクションでのべた共有結合は未占有軌道での占有軌道同士の重なりから生じるので、未占有軌道のエネルギー準位は直接には関係しません。
この種の結合は内部遮蔽効果の強い金属原子に多く見られるはずです。アルカリ金属を例に以下のべます。

中性アルカリ金属原子の最外殻の電子配置は軌道電子のみです。したがって、p軌道には電子は存在せず、未占有軌道はp軌道です。アルカリ金属の化学ポテンシャルを表1に示します。化学ポテンシャルとは、物質に存在する電子が物質内で存在できるもっとも高いエネルギー準位をいいます。アルカリ金属原子のイオン化ポテンシャルと比べるとその準位は高いといえます。このイオン化ポテンシャルはs軌道のエネルギー準位に相当するので、アルカリ金属の存在する電子は占有軌道に相当するエネルギー準位よりも高いところに存在できると解釈できます。上でのべたことにから、金属結合がアルカリ金属には存在することを暗示しております。

 

金属 イオン化ポテンシャル 化学ポテンシャル
リチウム -5.39 -4.72
ナトリウム -5.14 -3.23
カリウム -4.34 -2.19
ルビジウム -4.18(eV) -1.85(eV)
 
 
これまで、金属の化学ポテンシャルがそのイオン化ポテンシャルより高いのは伝導電子の凝縮効果によると説明されております。凝縮効果は伝導電子のスピン対生成からえられます。しかし、電子同士は互いに静電反発があります。この静電反発を押さえるには、金属のどこかに正電荷特性をもつ領域がなければなりません。ところが、これまで世の中で言われている説明では伝導電子は金属内に均一に分布しているとなります。正電荷領域は見つかりません。ということは、伝導電子は電子対をつくるのは容易ではないことを意味します。

不思議なことは、なぜ金属中の電子の最高エネルギー準位が伝導帯にあるかです。これによって金属の電気伝導性は良好であるといえますが、どうやって電子がその準位まで到達できるのでしょうか? 伝導電子を下からつめていくと伝導帯にくると言っております。しかし、ちょっと待ってください。化学的観点からみると、電子を伝導帯に電子対でつめるとは、結晶の構造変化をもたらすといっても過言にはなりません。なぜ、伝導電子ではその結晶変化が問題にならないだろうか?

また、伝導電子が存在できるエネルギー領域の半分のところに化学ポテンシャル(=フェルミエネルギー準位)が位置するといわれています。固体は無数の原子から成り立っており、その統計力学処理の結果であって、悔しかったら1個1個の統計処理をやってごらんといっております。ここで注意すべきは、この統計処理の基礎となっているのは単結晶であるということ、伝導電子は原子を数個集めた単結晶からは定義できず、結晶の周期性を利用して定義しているということです。

ここでは、自由電子論で言われる伝導電子のエネルギー準位の考え方は採用しません。その理由は、”物質内の電子はどこにいるかで電子のエネルギー準位は決まってくるのであって、電子自身がエネルギー準位を決めているわけでは決してない”ということです。自由電子論の決定的な弱点は、”電子の自由運動軌跡を定常性という観点できめてやれば、その軌跡にいる物質内の電子のエネルギー準位は決定する”ときめたことにあります。とんでもないことで、電子は光と異なります。水は高いところにいるから高い位置エネルギーをもつのであって水自体に位置エネルギーを想定することはできないのです。このイロハすらも現在の物性論はわかっていないのかとあきれるばかりです。金属および半金属棒をグニャグニャに曲げてやっても、そのフェルミエネルギー準位は変わりません。自由電子論の考えは、いままでの化学結合論が固定した考えで化学結合を見ようとするのとまったく同じ考えで、互いにまったく正反対から見ているにすぎない、と小生には思えます。それぞれ(化学結合論および自由電子論)のあまりにも頑な考え方は見ている分には結構面白いが、物性をまともにのべる段になるとそうはいっておれません。
以上のことから、自由電子論に基づく世の中で言われている化学ポテンシャルの定義が正しいとはとても小生には思えません。

余談:多くの興味ある物性は、上でのべた生成機構を利用して分かりやすく理解できます(個々の物性については後のセクションでのべます)。

これまで世の中でいわれている説明と比べて、上でのべた金属結合生成機構では、なぜ金属中の電子が伝導帯に存在できるのかについては明瞭です。また、結晶が転移欠陥があるにもかかわらず化学ポテンシャルがほぼ同じであるのは、金属結合生成が上記の機構によるためであると明確にいえます。

金属結合は化学結合の一種であり、当然のことながら、結晶構造に影響をあたえます。
  ハロゲン族(VIIb)を除く(IVb、Vb、VIb)族原子からなる多くの単体は、金属的性質を持ちます。なぜ?その理由は原子のもつ内殻電子からの遮蔽効果が強く、外殻電子が放出されやすいからといえます。これら原子の外殻電子は未占有p軌道および主量子数の大きなs軌道に入ります。したがって、これら単体結晶はアルカリ金属より複雑な多結晶性をもちます。
 

途中.....
 
  
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