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1.3.2.1未占有p軌道を介しての共有結合
 

電子を取り込みやすい性質をもつ未占有軌道p軌道に2つの電子(s軌道電子および外部原子のp電子)を取り込み、混成軌道をつくります。まえの節で、この軌道をもとに共有結合を作るとのべた。未占有p軌道をもつ原子を例にとりのべます。

アルカリおよびアルカリ土類原子は共有結合を作る未占有p軌道をもたない。未占有p軌道3個いずれも正電荷特性を持たないので、これらの軌道のどれか1つに占有軌道電子2個を注入することは電子反発があり考えにくい。したがって、この軌道で二つ原子の占有軌道が重ならない、換言すると共有結合は作らないと考えるほうが自然でしょう。

第2周期原子では、硼素原子の電子配置が2s22pで示されます。硼素、炭素原子は占有p軌道をもち、正電荷特性をもつ未占有軌道を持つといえます。 窒素原子は正電荷特性が期待できる未占有軌道をもちません。 しかし、立体的に軌道を見た場合、3個の占有軌道と対称的な位置に正電荷特性をもつ軌道を想定することができるでしょう。酸素原子は電子対を持たない軌道を二つ持ちます。これら二つの軌道の電子受け取り能力は同等であると解釈できます。しかし、酸素原子の有効核電荷は二つの電子を受け取るのに十分な能力をもっていません。このことは、イオン結合より共有結合ができやすいといえます。弗素原子は電子対を持たない軌道を1個持ちます。この原子の軌道に入る電子は原子内だけで閉じれますので、二つの原子の占有軌道の重なりを許す未占有軌道をもたないとも考えられます。フッ素原子同士ではそれぞれの電子受け取り能力は同じであり、共有結合が想定できます。F2分子は出来るでしょう。

図1硼素の結合電子配置
第3周期以降の原子は第2周期原子と若干異なります。この差は内殻電子からの遮蔽効果によってもたらされます。内殻電子からの遮蔽効果の影響が強くなるということは、未占有軌道として、その周期の一つ上の軌道が考慮されねばならないことを意味します。
 
珪素原子は3s23p3pをとります。この炭素原子と同様4価となります。しかし、珪素結晶は炭素で見られる石墨構造をとりません。この現象は、珪素結晶ではπ電子をもたないことを意味します。
このようなπ電子を作らない理由は、未占有軌道として軌道ばかりでなく、一つ上の4s軌道を考えればよいでしょう。 これは珪素は炭素と異なり電子を放出しやすいからです。この4s軌道への電子移動効果については、アルカリ原子を例に上でのべました。 この種の未占有軌道を介して二つの原子の占有軌道の重なりは期待できません(どの未占有軌道も正電荷特性がありません)。したがって、π電子はできません。しかし、つぎの金属結合セクションで述べるが、2原子間の共鳴電子移動結合はこの未占有軌道を介して可能です。以上が珪素結晶がπ電子を作らない理由です。π電子をつくる以上電磁反発を許容するだけの能力が未占有p軌道にもたなければなりません。ところが、1つの珪素原子内では3個p軌道は互いに重なる部分がどうしても生じます。珪素結晶では内殻電子からの遮蔽効果が強くその許容能力がないといっています。
ゲルマニウム結晶もほぼ珪素と同様に考えられます。内殻遮蔽電子が急激に増える(d電子が増加する)原子の場合には、内殻遮蔽効果はよりはっきりと現れます。錫は金属として3個の結晶変態を持ちます。もっとも低い転移温度以下では、ダイヤモンド構造を、次に歪んだ最蜜パッキング配列構造、最後に最蜜パッキング配列構造をとります。鉛は立方最蜜パッキング配列のみです。これら構造からπ電子の存在は想定できません。
この遮蔽効果は、燐、硫黄、塩素原子にも現れます。 つまり、これら原子の共有結合価数は3p電子がすくなくとも一個放出しやすいことを想定して決めてやればよい。塩素を例にとります。この原子の電子配置は3s23p23p23pで表されます。しかし、電子親和性のある原子(例えば酸素)が近づくと不対p電子を放出します。ここで酸素と塩素の間で共有結合が想定できます。ところが酸素はπ結合を作りやすいと上でのべました。この過程は(3s23p2(塩素)3p2(酸素-塩素)3p)の電子配置を作ると考えてもでしょう(エネルギー的に安定となるので)。3p2(酸素−酸素)の電子配置は3p2(塩素内)より安定です(電子反発が軽減されている)。この連続過程は可能であり、最終生成分子としてClO4-ができます。硝酸、硫酸の生成などもこのような機構で説明できます。
以上のように、原子個別の特性の検討から、未占有p軌道を媒介とした共有結合は、未占有p軌道を考慮することでほぼその概略が理解できるでしょう。すなわち、正電荷特性が推定される未占有軌道を介して2つの原子の占有軌道の重なりが可能とされ、ここで、原子間に共有結合が得られます

これまで、共有結合は電子対の観点からのみ議論され、どのように電子対が生成されるのかは議論の対象として無視されてきたといってよいでしょう。しかし、これまでの理論から硼素および窒素の共有結合性を理解することはむずかしい。

上でのべた硼素および窒素の共有結合生成過程は、これら原子のもつ共有結合特性の理論的取り扱いを容易にするはずです。その理論的対策が可能だからです。これらの原子を含む物質の物性は、単に電子対生成に基づいた理論計算ではできないので、これまで電子対のみから行う物性推定では実験値補正を必要としました。この理論計算上の困難さが何によってもたらされるのか、その理由は上でのべた通りです。
 

また、周期律表下位原子の未占有軌道はこれまで評価されておりません。したがって、電子対のみで扱いますと、どうしても珪素などの重い原子からなる物質ではπ電子が存在するという結果が得られます。 しかし、実験結果は正直で、ないものはないのです。
 

余談導電子はπ電子とまったく異なる生成過程(電子移動)で生成されます。生成過程の全く異なる電子を同一とみなして物性推定はできないでしょう。これまでの物性研究でこの区分けがキチンとされてきたかどうかは非常にあやしいと小生は感じております。この区分けの未整備が物性を難しくしていく原因の1つにあげられるでしょう。

えらいところに首をつっこんでしまったというのが正直な感想です。アーア。富士山は遠くで見るに限るし、若い頃の研究に対して抱いていた夢はそのままそーとしておくにかぎる。でも、やっぱり科学は人間が考えたものだということを実感しました。
 

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