主量子数nの原子軌道は、原子核の核電荷をZe(e:最小電荷単位)としたとき、En=-(Z/n)2/2(単位:1ハートリー=27.2eV)で決められるエネルギー準位で表示されます。
各々の原子は電子一個のみからなるという仮定のもとで、E1=イオン化ポテンシャルを作るに必要な有効核電荷Zを求めます(実際の原子の核電荷は残りの電子で補償される)。このことは原子は核電荷量1および電子1個を想定しております。その結果は下の図の示す通りです。有効核電荷量が1より大きいことは、電子一個を原子外に取り出すときに大きなエネルギーが必要なこと、および電子を原子に取り込みやすいことを意味します。
原子軌道の項のところで、原子軌道上の電子は、
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原子核との静電引力
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電子同士の静電反発相互作用
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原子軌道間の電磁気引力相互作用(スピン対)
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原子軌道間の電磁気相互作用(構造配置)
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原子軌道間の電磁気反発相互作用
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電磁遮蔽
による影響を受けるとのべました。有効核電荷の変化を、上記相互作用の観点から述べます。
不活性ガスの有効核電荷は同じ周期行の原子と比べていずれも大きい。原子軌道間の電磁引力相互作用が働くため、電子を外にとりだすためにはこの相互作用に打ち勝つ必要があるためであると解釈できます。これらの有効核電荷が原子番号の増大とともに減るのは、内殻軌道からの電磁遮蔽が原子核に働き、原子核のもつ核電荷が最外殻原子電子軌道に作用できないためと解釈できます。これは、また、原子番号の増大とともに理想的な電磁気引力相互作用が働きにくくなることも意味します。したがって、原子番号の増大とともに電子が原子より外に出やすくなると解釈できます。
アルカリ金属原子に対して
内殻軌道の電磁遮蔽効果はとくに有効に働きます。不活性ガス原子の電子は原子価電子同士が相互作用する力を持っています。しかし、アルカリ原子の原子価電子はそのような作用を持ちません。内殻遮蔽で減少した有効核電荷量では最外殻電子を原子内に留めておくことがむずかしく、外界の作用で容易に原子外に最外殻電子は飛び出しやすいといえます。原子番号の増大とともに、アルカリ金属原子の最外殻電子は原子より外に出やすくなる。原子価電子は方位量子数0のs軌道に入ります。
アルカリ土類原子は、周期律表で同じ行のアルカリ金属原子より大きな有効核電荷量をもちます。原子核の持つ電荷が内殻軌道からの遮蔽効果を打ち消すというより、原子価電子によって占められる軌道同士に電磁気引力相互作用があり、電子を外に取り出すには、この原子軌道間の電磁気引力相互作用に打ち勝つことが条件となるためと解釈することができます。原子価電子二個はともにs軌道に入ります。
IIIa族 原子は同行のアルカリ土類原子より小さな有効核電荷量を持ちます。原子価電子はs、p軌道に入ります。これは内殻からの遮蔽効果が突然弱くなったというより、原子軌道がアルカリ土類原子の原子価電子の原子軌道と異なる原子軌道間の電磁引力が効かない軌道に電子が入ったためであると解釈できます。この異なる軌道は、原子軌道の項から、p軌道に相当します解釈できます。
IVa族原子はIIIa属原子より大きな有効核電荷量をもちます。これは、p軌道のもつ特性によると解釈できます。電磁相互作用と軌道上の静電気電子間反発相互作用をくらべた場合、後者のほうが前者より相互作用エネルギーの絶対値は大きいとみれます。したがって、p軌道に空きがある場合には、電子はその空き軌道にはいります。p原子軌道の形状から、2個のp軌道は互いに磁気的に引き合う電磁気空間を作ります。
これは一種の電磁気引力相互作用(同じ軌道同士の電磁気相互作用と異なる)に相当します。このような空間をもつ電子配置から電子を原子外に取り出すためには、その引力を解消するエネルギーを必要とします。つまり、有効核電荷量の増加を意味します。

Va族原子IVa族原子と同様に解釈できます。
VIa族原子はp軌道はスピンを除くと三種しかありません。これは一個のp軌道に電子二個入ることを意味します。電磁相互作用と軌道上の静電気電子間反発相互作用をくらべた場合、後者のほうが前者より相互作用エネルギーの絶対値は大きいとみれます。したがって、有効核電荷は小さくなります。
VIIa族原子はVIIa属原子より大きな有効核電荷をもちます。これは、p軌道のもつ特性によると解釈できます。原子軌道の形状から、2個のp軌道電子は電子対をつくると同時にp軌道特有な電磁気空間を作ります。これは、さきにのべたように、一種の電磁気相互作用(方位量数、磁気量子数が同じ軌道同士の電磁気相互作用と異なる)を作ります。つまり有効核電荷の増加を意味します。
VIIIa族原子はVIIa族原子と同様に解釈できます。
遷移金属原子の電子配置はつぎのように解釈できます。
上記図から遷移金属原子はIIIa族原子と異なることがわかります。スカンジウムの有効核荷電量はカルシウムのそれよりわずかに増えているが、その有効核電荷はp軌道を想定して求めると減少するはずです。しかし、図では逆の傾向を示しています。スカンジウムの原子価電子は3個あり、この内二個は4s軌道に、スカンジウムの残り電子一個は3d軌道に入るからです。3d軌道は4s軌道の内側にあるので、その軌道上の電子は外に取り出しにくいはずです。スカンジウムの原子価電子は4s、3d軌道に入ります。チタニウム、バナジウムも同様にd軌道に電子が入ります。
p軌道はp軌道特有な磁気的空間を作ります。この現象はd軌道にも当てはまります。ここで注意を要するのは、d軌道は磁気量子数までを考慮した場合5個あり、これら全体の磁気安定性はエネルギー的に無視できません。
電子対生成の場合には、必ず静電気反発相互作用があります。しかし、全体の構造的磁気安定性では電子反発作用が小さいので、3d軌道全体の磁気的安定性が、s2電子対安定化エネルギーを上回る場合には、d軌道が先に電子充満を起こしてもよさそうです。上記図をみると、電子が4s軌道に入るのと、3d軌道に入るのとでは、カルシウムと比べるとエネルギー的に見て大差はありません。また、第四周期元素ではクロムおよび銅のところで有効核荷電の減少が見られます。この現象はカリウムで見られます。クロムおよび銅で電子充満順序の変化が起きているとみてよさそうです。クロムおよび銅より前のバナジウムおよびニッケルでも電子充満順序の逆転が生じても不思議ではありません。
第五周期元素では内殻軌道からの遮蔽効果は第四周期の遮蔽効果よりかなりつよいため(遮蔽に関与する内殻の最外殻電子数が増えるので)、s2電子対安定性は弱まり。d軌道による磁気安定性が強調されます。第六周期原子では、軌道半径の増加とともに内殻軌道からの遮蔽効果は弱まり(遮蔽に関与する内殻の最外殻電子数が変わらないので)、第四周期と同様なd軌道による磁気安定性が強調されます。残念なことに第五周および第六期遷移金属についてはこれ以上詳しいことは上の図だけから説明できません。
これまで、遷移金属原子の原子価電子の電子配置はFuntの経験則として知られています。ところが、なぜ、Funtの法則に従うのかについては、電子スピン対だけでは理論的に決定できません。世の中で言われれている理論的考えによれば、原子の電子配置は、電子スピンばかりでなく、原子価電子および原子が取り得るいくつかの物理量をもとに決定されます。しかし、原子軌道による電磁相互作用によって最適軌道配置が決定されるとみれば、遷移金属原子および希土類原子の奇妙な電子配列は合理的に解釈できます。
以上の電磁気作用からの見方は、これによって中性原子の電子配置が推定出来ることから、原子価電子の評価の一つの有力な見方になるでしょう。
これまで、周期律表の各族原子の化学的性質は主に、原子価数という数で議論されてきました。なぜ、ハロゲン族、カルコゲナイド族が、電子を呼び込みやすいのか、上記のことから、矛盾なく体系的に解釈できます。 また、これまで、原子の電子配置および分子結晶の構造および電子配置は、電子スピンをベースに論じられてきました。上でのべたことから明らかなように、物質の構造および電子構造はそれだけでは決定できません。現在の物性の理論的予測は一番基本的な部分で不都合な部分が生じているわけです。これまでの物質の理論的評価がむずかしい理由の一つは、上のことから理解できます。
これ以降のセクションでは、この物理的見方でのべます。原子間の相互作用は、電磁気的相互作用の観点からのべます。