量子力学を用いた原子軌道の導出はあつかいません。固体物質を評価するのに必要とされることのみのべます。
原子構成電子は原子核の周りを回る軌道上に在ります。この軌道を原子軌道といいます。原子軌道が一種の定在波として表現できることはSchrodingerらによって見事にまとめられました。原子の電子の運動は、電子と核との静電引力で定義した場合、三次元の原子軌道(一種の3次元定在波)は半径および方位角さらに傾き角により決まります。原子軌道は現在Schrodinger波動方程式
Ey(r,q,f)
= H y(r,q,f)
(y:波動関数、r:半径
q:方位角
f:傾き角
H:ハミルトニアン演算子)
を解くことで求められています。
定在波の条件を満たすために、無数の波が持てるわけではありません。原子軌道は3種類の量子数(半径で決まる主量子数、方位角で決まる方位量子数、傾き角で決まる磁気量子数)で定義されます。これら量子数で定義される軌道のみ原子軌道として存在できます。これら量子数の特徴を以下に示します。
| 主量子数n |
n |
| 方位量子数m |
0,1,2.....n |
| 磁気量子数 k |
-m,-m+1,.....,m-1,m |
| スピン量子数 |
+1/2,-1/2 |
主量子数
nに属する原子軌道は方位量子数が0からnまで、さらに、各方位量子数mについて、磁気量子数-mからmまでの整数で定義される原子軌道を含みます。方位量子数および磁気量子数は主量子数によってその最大値は制限されています。軌道半径は主量子数の増大とともに大きくなります(原子核から離れる)。
電子は原子軌道に入ります。上記原子軌道にはつぎの性質があります。
1)原子核電荷数Zの原子核の周りを1個の電子が周っている軌道では、
E=-1/2(Z/n)2(Z:原子核電荷,n:主量子数)
単位 Hartree(27.2eV)
で定義される。
主量子数が小さい軌道は、大きい軌道よりエネルギー的に低い。
2)電子を複数もつ原子の場合には
一般に主量子数の小さい軌道を電子は先に充満します。
3)主量子数に入る最大原子軌道数を以下の表に示す。
| 主量子数 |
殻名 |
最大軌道数 |
|
| 1 |
K shell |
2 |
2 |
| 2 |
L shell |
8 |
10 |
| 3 |
M shell |
18 |
28 |
| 4 |
N shell |
32 |
50 |
| 5 |
O shell |
50 |
100 |
| 6 |
P shell |
72 |
172 |
|
|
spinを考慮 |
spinを考慮 |
4)電子を複数もつ原子の場合には、
方位量子数が小さい軌道は、大きい軌道よりエネルギー的に低い。
| 方位量子数 |
殻名 |
最大軌道数 |
| 0 |
s |
2 |
| 1 |
p |
6 |
| 2 |
d |
10 |
| 3 |
f |
14 |
| 4 |
g |
18 |
| |
|
spinを考慮 |
5)電子を複数もつ原子の場合には
主量子数が同じ場合、一般に方位量子数の小さい軌道を
電子は先に充満されます。
(磁気量子数の大小は充満順序に影響しません。)
ここからが大事な点です。
しかし、原子軌道は上記に述べた量子数のみを考慮すればよいというものではありません。電子が閉じた回路を流れる場合必ず磁場が生じます。磁場は原子軌道に影響を与えるので、原子軌道は、電子の2種類の運動方向(右回転および左回転)を考慮しなければなりません。ここでは、電子の方向性(方向性は二つのみ)から決まる量子数をスピン量子数と呼びます。
世の中ではスピン量子数は電子の自転により作られるものであるといっております。もしそうだとすると、原子核の周りを回るという電子の運動軌跡によって生じる磁気は説明できませんし、なぜ排他原理が成立するのかは全く理解できません。神の言葉みたいに電子はフェルミ粒子であるからとはいわないでください(なぜフェルミ粒子であるのかの説明が必要になりますから)。同じ旋回向きの電子が同じ原子軌道に複数入る電子配置は反発作用が生じる故とれないことは物理の常識からいっても過言とはならないでしょう。
Stern-Gerlachの有名な実験からスピンが発見されました。電子が独自にスピンをもつと仮定すると、磁場の影響で電子は磁場に対して直角な一方向のみに電子は検出されるでしょう。直角な2つの方向で検出されるということは、電子スピンは電子独自なものではなく、原子軌道に依存していることを示しております。
スピンの定義は、相対性理論を用いて説明されております。スピンの説明になぜ時間軸を考慮した相対性理論が必要なのかは、これまで明らかにされておりません。しかし、
上でのべたことは、電子の軌道を表す場合は,右旋回と左旋回という時間軸を逆にとるスピン操作を必要とすることを示唆しており、この操作は古典的Schrodinger方程式では表現できません。回転方向からのスピン定義は、世の中で採用されているスピンを考慮した場合の方程式解法と一致します(Bohr磁子との関連についてはPhysical
Review Letters投稿中)。
電子の運動方向から
6)主量子数、方位量子数、磁気量子数が同じ二つの軌道における
これら二つの軌道上の電子のスピン量子数は反対称である
( Pauliの排他原理)。
方位量子数、磁気量子数が同じ二つの軌道の重なりは二種類あります。一つは重ね合わせであり他の一つは平行に並べることです。
前者の構成では、スピンは平行となりますが、これら二つの電子は互いに静電的に反発をうけます。後者の構成では静電的反発はかなり小さくなります。静電反発を考慮すると、原子スケールで前者の構成はとりにくい。後者の構成のみが可能とされます。残念なことにどのように平行となるか今のところわかりません。
7)主量子数が同じで方位量子数が異なる二つの軌道は
8)主量子数が同じすべての軌道に電子対が想定される場合、
主量子数がそれより大きい軌道に対して電磁遮蔽効果をもつ。
上記量子数が決まれば、原子軌道の軌跡は一意にきまるので、原子軌道は軌道の複雑な形で表現するよりも、この量子数を用いて表現され、そこに存在する電子は上付き数字で表現されます。
| 主量子数2方位量子数1の軌道 |
2p |
| 2pに存在する電子が3個 |
2p3 |
原子に属する電子は必ず上記4種の量子数で定義された軌道のどれかに入ります。
原子軌道の特徴から、つぎのことが言えます。水素原子は主量子数1、方位量子数0
のs軌道をもち、ヘリウム原子も同様である。リチウムは3個の電子を持ちます。主量子数1で表される軌道は一種の軌道(s軌道のみ、スピンを除く)しか持たないので、この軌道に電子が充たされます。残った一個の電子は次に主量子数2、方位量子数0のs軌道に入ります。即ちリチウム原子は1s22s1の電子配置を持ちます。詳しくは次の電子配置の項をみてください。
| He |
Ne |
Ar |
Kr |
Xe |
| 1s2 |
1s22s22p6 |
1s22s22p63s23p6 |
1s22s22p63s23p63d104s24p6 |
1s22s22p63s23p63d104s24p64d105s25p6 |
原子価電子:太字
原子は方位量子数の異なるいくつかの原子軌道をもちます。
ここで、主量子数の最も大きい方位量子数の軌道に入る電子を総称して原子価電子といいます。たとえば、酸素の電子配置は1s22s22p4であらわされますが、2sと2pに入る六個の電子を原子価電子といいます。